ハレの日も ケの日も

推しを愛して自分を満たす、その記録です。

【ネタバレあり】クラッシャー女中

私が中村倫也っていう役者に興味を持ったのはそれよりも少し前なんだけど、ドドーンと沼に落ちて戻れなくなったとはっきり自覚したのは、劇団新感線の舞台『Vamp Bamboo Burn』をBlu-rayで観た時。そもそも生で観た訳でもなければ、そこまで「推し」と認識していた訳でもない人が出ているというだけで何かに突き動かされるように円盤を購入したことがそれまでの私にはあり得ないんだけど、とにかくHDDを圧迫している撮りためたドラマを差し置いて、VBBを観た。そして、戻れなくなった。舞台観劇自体が未経験だったせいか、あの勢いと迫力に押し流される3時間半は今でも忘れられない。そして、中村倫也の虜になった。

 

前置きが長くなった。とにかくあの時から「板の上の倫也さんを、生で観る」ことが私の夢であり生きる糧のひとつだった。大袈裟だな。でもそういう気持ち。

 

そんな私が今日2019年3月27日、10ヶ月半越しの夢を叶えた。本多劇場での『クラッシャー女中』観劇。作・演出は根本宗子さん。幸運なことにこの後何度か観劇できる予定で、きっと二度三度と回を重ねるごとに新たな気づきがあるんだろうけど(そう願いたい)、私の、はじめての倫也さんの舞台は、今日だけ。だから長々と思ったことを綴ります。

 

———ここから舞台のネタバレ盛り盛りです———

 

まず、とにかくまずこれを言いたい。

倫也さんの声量に、圧倒された。

ほかの役者さんの台詞だってみんな聞き取りやすかったのに、ひとたび倫也さんが話し始めたら(少しも声を張り上げる様子なんてなかったのに)その圧倒的聴きやすさと声量に衝撃を受けて「俺は舞台人だぞ」の意味の一端が、私にも分かった一瞬だった。あぁ、これから水を得た魚のような倫也さんをこの目で観られるんだ、って昂ぶってたまらなかった。生のお歌にももちろん感動したんだけど、歌だけが特別に浮き彫りになるわけではなくて、その発声と声量、緩急、全てが一貫して素晴らしかったな…。

 

さて。

 

義則(中村倫也)の屋敷に婚約者・静香(趣里)とともに乗り込んできたゆみ子(麻生久美子)。実は静香は義則とその母への復讐心を滾らせており、ゆみ子は幼い頃から盲目的に義則を愛していて「ひとりぼっちになった彼に自分だけが救いの手を差し伸べる」ことを実現させるためだけにあらゆる手を使って義則を窮地に陥れる。

 

というストーリーなんだけど、このゆみ子の描写がとにかく恐ろしい。自分の思い描く義則が全てで、ずっと見つめてきた自分が一番義則を理解していると信じて疑わない。思惑通りに窮地に陥った義則が怒りと絶望に狂っているのに、ゆみ子は夢が叶った喜びに満ちている。義則の言葉は聞こえているはずなのに、その訴えは一切ゆみ子の頭には届いてない。

 

…なにが怖かったって、ゆみ子が「役者やアイドルを推すファンそのもの」にしか見えなかったこと。都合のいいことしか耳に入れない、一面を見て全てを理解した気になる…アイタタタタタ、耳が痛い、痛いよごめんなさい根本さんもうしません許してください…!!!

 

いえ、私にはそう見えたって話で、普通に恋愛関係や友人関係、親子関係の中で起こりうる悲喜こもごもそして人間のエゴが描かれていたんだけど、ほんと怖かったし、そこから逃げ出す義則が倫也さんご本人に見えてしまいそうであぁ、もう。

 

今回のお芝居中、一番しんどくて観劇後も思い出しては泣いてしまうくらいの台詞があって、それはここでもまだ書けないくらいにはしんどい。もし、今後どこかで触れる機会があれば、そこで書く、かな。ただ、そのシーンの倫也さんの表情は神がかっていて、泣いてしまって少し見逃したことが悔しくてならない。次回は両目をかっぴらいて一部始終焼き付ける。

 

それから観劇前に読んだどなたかの感想にあった「見たかった倫也さんが全部詰まっていた」に、大いに納得。もう序盤の序盤で「いく?いった?もういったの?あぁよかった」で星屑ばら撒いたの私だけじゃないはずだから絶対!!なんてこと言わせるんだよこっちは生の倫也さん見ただけで過敏になってるのよほんとに!!って心の中で両手合わせたし、最後の方の花代の「(義則に対して)性的なものしか感じられない」(だったかな、あぁ衝撃でうろ覚え…!)なんて「えっえっやだ根本さん私たちのうちの誰かのフォロワーだっけ?えっやだもう」って震えたくらい共感しかなかった。終盤のゆみ子の告白に義則が憤慨して絶望して頭を抱えるシーンでは、擬似「関係の終わりが見えてきた恋人同士の揉め事」気分を味わえました。(いや倫也さんがああいう風に苦悩してた訳じゃないんだけど。わかってるけど。)とにかく全編通して大好きな中村倫也詰め詰めでしたお腹いっぱいです。本当に本当にありがとうございます…!!

 

そして、文章にすると本当に救いのない物語なのに、これを全編通してコミカルに描くんですよ、根本宗子っていうひとは!!!!!恐ろしい。あの脚本を受け止めてこんな素晴らしい形で世に出してくるこのカンパニーの役者全てが恐ろしいよ私は。これからまだどんどんブラッシュアップされていくんだろうな。あぁ、怖いくらいに楽しみだ…!!